蹴破ったドアの向こうには、想像通り無数の禍憑がひしめいていた。

「So many……。あそこに斬り込んで聞くのは少々抵抗を感じますね」

若干のためらいを見せる水心子正秀。
その隣で低く身構える者があった。

「蒼火封獄――」

影打・ソボロ助廣だ。
一瞬にして車内の気温が跳ね上がる。それを感じた影打・長曾祢虎徹は「おーおー珍しくやる気じゃねーか」と愉快そうに笑った。

「月冴ゆる金閣寺!」

影打・ソボロが剣を振るう。すると密閉されているはずの車内に蜃気楼のように揺らめく建造物の姿が現れた。その名は鹿苑寺――またの名を金閣寺。
逃げ場のない禍憑たちはその内へと取り込まれて行く。彼女がさらに一振りすると金閣寺が 蒼黒の炎に包まれた。

「あっと言う間に……」

あれだけいた禍憑たちは瞬時に灰となっていた。
畏怖の表情を浮かべる水心子正秀の顎をクイと持ち上げると、影打・ソボロ助廣は挑発するように言う。

「わたくし様、愚図愚図しているのは嫌いなの~」
「……気安く触らないでください」
「あら~こっちのスイシンシもつれなくて、なかなか可愛いわねえ。膝まずかせたくなっちゃうわ」
「水心子、おまえまで喧嘩してどうする。行くぞ!」
「ま、待ってください虎徹さん!」

次の車両に移ったが、案の定禍憑だらけだった。