関東の山間部、辺境の地で人々がひっそり暮らす寒村があった。
粗末な家とわずかばかりの食料を除けば、これといったものはなにも無い場所。
今その村に大量の禍憑が波となって押し寄せつつあった。

「ハハハッ! 来やがった来やがった!」

村の中央に建つ茅葺き屋根の上で物見をしていた影打・長曾祢虎徹は、その軍勢を視認するなりうれしそうに声をあげた。
下からは村人たちが不安そうに彼女を見上げている。

「ほ、本当に大丈夫なんでしょうか……?」
「ああ? 俺たちの力が信用ならねえのか? だったらテメェらも戦え。震えてれば守ってもらえると思ったか?」
「そ、そんなあ……」

影打・虎徹は屋根から飛び降り、脇に立てかけていた巨大な刀に手をかける。

「さーて禍憑ども、鬼ごっこでもして遊ぼうか。もちろん……鬼は俺だ」

村には3つの入口があり、そのすべてに強固な柵が設けられていた。昨夜、村人の尻を叩いて夜通しで設置させた物だ。
影打・虎徹はそこから無理やり雪崩れ込んでくる禍憑を1人で食い止めた。
一振りで何体もの禍憑を葬り去ってゆく。

「フン。どれだけ束になって来ようが、どうせ皆殺しだ」

その最中、村の西側で大きな氷柱が立つのが見えた。

「お。スイシンシのヤツも派手にやってるな」

となれば当然、東側を守る影打・ソボロ助廣もすでに戦闘に入ったと見ていい。あとはそれぞれがどれだけ暴れるかだ。
一心不乱の戦闘。殲滅。胸が踊る。
だが、その楽しみに水を差す者がやって来た。