理屈とは〈第三の脚〉だ。千変万化の世に翻弄されてよろめき倒れる事を防ぐ脚。
どんなに奇異に思える事柄でも、ひとたび理屈という筋を通せば向こうの景色が見渡せるようになる。
私はそう考えて生き、戦ってきた。それがソボロ助廣というモノの在り方だ。
だから、目の前の異様な光景にも必ず理屈を通せるはず。

今、私の目の前には1人の人物が立っている。刻は夜半。場所は繁華街からほんの1本外れただけの路地だ。

「あらぁ~~? どこ見てるのかしら?? ふふふ……」

その人物と鉢合わせたのは、町中に現れた禍憑を追い立て、この場所までやってきた時のことだった。
闇から突然現れ、私の追っていた禍憑を斬り捨ててしまった彼女を目にして私の体は震えた。

「別に。強いて言うなら……貴方のお顔を拝見しておりました」

それでも強がりはまだ言える。

「わたくし様の顔がそんなに珍しいかしら~?」

私は心の中で答える。
――珍しいもなにも、異常です。
何しろ、相手の顔は私自身の顔と瓜二つなのだから。
もちろん自分の顔なら毎日鏡で見ている。密かにけっこう、かなりかわいいかも、なんて思ったりもしている。だがそれは、鏡越しの左右反対の顔だ。こうして肉眼で己の顔を目にすると、その異様さに思わずよろめいてしまいそうになる。
だめだ、〈第三の脚〉で支えなければ。

「突然出てきてなんのつもりですか? 禍憑を斬ったということはあなたも巫剣なのでしょう? だとしたら所属は……」
「そうよ。わたくし様は正真正銘の巫剣。あなたなんかよりもね」

その声色に悪寒が走る。
声まで私にそっくり……なのに違いない。だからこそ鳥肌が立つ。
他者から聞かされるのと、体内の振動を通して内側から聞くのとでは微妙に響きが違う。印象が違う。その微妙なズレが気持ち悪い。
たしかに助廣の巫剣は私だけではない。
だが、こんな巫剣には会ったことがない。話に聞いたこともない。