「いらっ……」
「ほらテツ~。言ってぇ♪ そのお口でいらっしゃいませって言って♪」
「いら……いら……」
「ほら~。もう一息よ~。イライラしないで~」
「いらっ……しゃ……うがー!! なんで俺がこんなことしなくちゃならねーんだ!!」

影打・長曾祢虎徹、通称テツは耐えかねたように叫ぶと、持たされていたお盆を床に叩きつけた。癇癪を起こしたテツをなだめるのは影打・ソボロ助廣、通称・ヒロだ。
本来、禍憑に触れれば禍憑を斬り、仏に触れれば仏を斬るような危険な気性を持った2人が、今日は珍しく前掛け姿で洋風茶房=めいじ館に立っていた。

「説明受けたでしょ~。今日、他の巫剣はみーんな哨戒に駆り出されちゃって、めいじ館が人手不足なんだって」
「Hey you two! そこ! いつまでもイチャついてないで食器を運びなさいよ!」

その場には影打・水心子正秀、マサヒデもいて、同じく前掛けをしている。

「うるせぇ! てめーはさっきから指示してばっかじゃねぇか!」
「わたしのような有能な司令塔がいなきゃまともに店が回らないでしょう」

マサヒデの発言にテツは若干顔を引きつらせ、ヒロに耳打ちする。
「あいつマジか……。自分のことを有能だと思い込んでるぞ」
「ね~。しょっぱなから10枚連続でお皿割ったのにね~」
「聞こえてるわよ! わたしがこのお店を任されたからには売り上げ減なんて絶対に許さないわ! ほら、お客が来たわよ。テツ、行って! Go!」
「なんだよもう……。こえーよ。あいつの圧がこえーよ」

テツは渋々ながら接客に立つ。