「ここが横濱ね。So nice! 初めて来たけど真新しい物がいろいろありそうじゃない」

その日、影打・水心子正秀は茶屋や芝居小屋が立ち並び、人で賑わう伊勢佐木町通りに立っていた。
しばらく行動を共にしていたコテツ、ソボロの両名が最近戻ってこず、彼女は暇で仕方ないのだ。

「なによ2人とも……ちょっと出かけてくるって言ったきり……。いいもん。わたしはわたしで自由に生きるから。さて、まずは芝居でも見て……」

強がり半分に1人で啖呵を切ってから道を歩き出す。と、すぐに後ろから声をかけられた。

「お姉さん、絵を買って行きませんか?」

見ると10歳前後の少年が筆を片手にこちらを見ている。彼の後ろには何枚かの絵が飾られていた。

「Painter? その後ろの絵、あなたが描いたの?」
「はい。画家を目指していまして、その……」
「フーン。そういうことなら……いらないわ」
「ええっ」
「だって、ちっとも新しさを感じないんだもの。Conservative.若いのに保守的」
「で、でも……これは今流行りの技法で……!」

痛いところを突かれたのか、少年は焦って椅子から立ち上がった。

「流行っているってことは、それはもう廃れ始めているということよ。わたしにとって新しさのない物は平等に無価値なの。よしんば実力があって新しい表現を見つけることができたとしても、結局は運がないと人生思い通りにはならないわけだし、諦めて故郷へ帰ったら? Bye」
「そ、そんな……」

夢見る少年に対してあまりに酷な現実を突きつけ、彼女は容赦無くその場から離れようとする。
その時、通りに女性の悲鳴がこだました。