- 先日、小烏丸を通じて副司令からある通達があった。それは私たち、めいじ館に所属する巫剣にとって大きな出来事を告げるもので――
- 城和泉正宗
- 巫剣使い……本当に信頼できるのかしらね……
- 牛王吉光
- 城和泉正宗、キミのそれ……今日何回目?
- 桑名江
- まぁまぁ、牛王さん。確かに城和泉さんが不安になる気持ちもわかります
- 牛王吉光
- でも桑名江、キミは嬉しそうに見えるけど?
- 桑名江
- あぁ、その……わかりますか?
- 城和泉正宗
- 少なくとも、嫌って顔はしていないわね
- 桑名江
- 実は何度か副司令からお話を伺っていまして。城和泉さんよりはいろいろ知っているんです
- 城和泉正宗
- えぇ!? 桑名江、ずるいわよ!
- 牛王吉光
- ああ、それね。実はわたしも同じ。各所からいろいろ聞いてる
- 城和泉正宗
- なによそれ!? どうしてわたしにも教えないわけ!? そうしたら少しは気も紛れるのに……
- 牛王吉光
- 嫌だね。どうしてキミが楽になる手伝いをしないといけないのかな? わけがわからないよ
- 城和泉正宗
- ごーおーうーよーしーみーつーっ!! いいわ、そこまで言うなら力づくで聞き出してやろうじゃない!
- 牛王吉光
- やれるものならやってみればいい。場所も時間もわきまえないキミには――
- 桑名江
- ――だ、駄目ですってば! 二人ともっ!?
- 小烏丸
- なんじゃお主ら、こんな時間に騒がしいのぅ
- 城和泉正宗
- 邪魔しな――って、小烏丸!?
- 小烏丸
- いかにもじゃ。城和泉正宗、お主は迎え役じゃろう?
- 城和泉正宗
- あ、う……そうだけど……
- 小烏丸
- わかっているなら、今日は早く休め
- 城和泉正宗
- はい……
- 丙子椒林剣
- あら、駄目ですよぉ小烏丸。城和泉ちゃんに悲しい顔をさせては~
- 城和泉正宗
- 副司令!? い、いつここに!?
- 小烏丸
- 妾が連れてきたのじゃ。明日の朝に来るよりは前日のうちに来たいと言いおっての
- 丙子椒林剣
- ええ。ありがとう小烏丸、助かりました~
- 城和泉正宗
- 副司令が直接来るなんて思ってませんでした……
- 丙子椒林剣
- 当然のことですよ~? このめいじ館に巫剣使いが訪れるのは、初めてのこと。しっかりとお出迎えしなくてはなりませんからねぇ
- 小烏丸
- こういう時は動きが早いのぅ、丙子椒林剣。普段はものぐさじゃというのに
- 丙子椒林剣
- 小烏丸?
- 小烏丸
- ん? ああ、いや……今のは独り言じゃ。気にするな
- 桑名江
- 近々いらっしゃると聞いていましたから、お部屋の準備はしてあります。ご案内しますね
- 丙子椒林剣
- はい、よろしくお願いしますね~。それと、城和泉ちゃん?
- 城和泉正宗
- は、はい!?
- 丙子椒林剣
- 不安になるのはまだ早いですよぉ。ちゃんと会って、それからもう一度、あなたが判断してください。小烏丸も言いましたが、今日はゆっくり休んでくださいね~
- 城和泉正宗
- わかり、ました……
- 丙子椒林剣
- では、また明日。お先に失礼しますね~
- 小烏丸
- うむ、ではの
- 牛王吉光
- わたしは少しくらい、付き合ってあげても良かったんだけど……丙子椒林剣にああ言われたら仕方ないね、城和泉正宗?
- 城和泉正宗
- もう疲れちゃったわよ……私も部屋に戻るわ
-
巫剣使い。私たち巫剣の力を引き出す使い手にして主。
ただ誠実であれば良いわけじゃない。私が求めるのは――ううん、今はそんなこと考えてても駄目よね。
- 城和泉正宗
- とりあえず、会ってみないことにはわからないもの!
電撃G'sマガジン 2016年12月号掲載