「虎徹、これは一体どういった次第ですか?」

客車の窓から顔を出したままソボロ助廣が俺に訪ねてくる。だが俺に訊かれたってわからない。

「嫌な予感がします……」

俺の隣では水心子正秀がその整った顔をわずかに曇らせている。

「確かにこの速度は尋常じゃないな」
「せっかく横浜で羽を伸ばして来たと言うのに、最後の最後で災難ですか」

ソボロ助廣は愚痴りながらメガネについた煤を拭く。
珍しい組み合わせだが、俺たち3人は偶然重なった余暇を利用して、横浜まで足を伸ばした。そして向こうで充分に買い物と行楽を楽しんだ後、汽車に乗って上野駅を目指したのだが……その汽車が突然暴走を始めたのだ。
汽車は止まるべき駅を素通りし、落とすべき箇所で速度を落とさぬまま、狂ったように汽笛を鳴らした。
俺たちは互いに顔を見合わせ、これはただ事ではないと席を立ったところだった。
やがてドアが開いて前の車両から車掌が転がり込んで来た。

「み、みなさん! 急ぎ後部車両へ避難してください! こ、この先は危険です!」

車掌を助け起こし、事情を訪ねる。

「おい、危険ってのはどういうわけだ!」
「そ、それが私にも何が何だか! 突然運転席にバケモノが乗り込んで来て……!」
「バケモノ!?」

それだけで俺たちにはピンと来るものがあった。

「ソボロ、水心子行こう!」
「はい!」

隣の車両に移った途端、乗客が雪崩のように押し寄せて来た。彼らは口々に悲鳴を上げている。