花びらのような牡丹雪が平原と、そこを囲む広大な林に降り続けている。

「美しき哉」

鶴丸国永は平原に独り立ち、冬の明空を見上げ雪の音を聞いていた。
やがてその場に空間を引き裂くような咆哮が響き渡る。
この愛しく美しい静寂が、遠からず闖入者らによって破られることは織り込み済みだったが、それでも残念に思った。
木々の隙間から姿を現したのは14体の禍憑。
報告通りの数だ。
ほうっと白い息を一つ吐き、抜刀する。

「やっと来た~~。それじゃ、ちゃちゃっと片付けますか」

彼女の言葉に応じるように禍憑らが雪を蹴る。
鶴丸国永もまた前に踏み出す。だが足元の雪はほとんど乱れない。
両者の距離が一気に縮み――そう思ったときにはすでに刃と爪は交錯していた。
鶴丸国永が緩やかな放物線を描いて着地する。
遅れて1体の禍憑がその場に倒れ、動かなくなった。
それを見た別の禍憑が大きく吠え、すぐさま鶴丸国永に飛びかかる。
だが彼女はその牙を意に介さず、かたわらを通りすぎる。

「はぁ、さっき斬っといたんだから、大人しくしててよ」

直後、2体目の禍憑は胴と頭が泣き別れ、雪面にたどり着く前に虚空へと消えてゆく。
一度の交錯で2体を屠られたことを悟った禍憑達はいったん鶴丸国永から距離を取った後、彼女を中心に円を描くようにうごめき出した。