勝者は歴史に語られ、神に。
では、敗者は……?
歴史で語られることのない敗者は
いったいなにになるのだろう。

「……今度こそ、うまくやっていけるでしょうか?」

宿場街の入り口に佇む少女が呟いた。
くたびれた旅装束は、少女が長く旅をしてきたことを表していが、そんな汚れた格好であっても、少女の美しさは少しも損なわれていなかった。
艶やかな長い髪は、長旅の埃こそついていたが、それでもなお白銀に輝き、凛とした顔立ちは高貴さすら漂わせている。
そんな美少女が一人でいれば、下卑た声の一つでもかかるのが宿場の常だが、そのような者は存在しなかった。
そのしなやかな体は、少女らしい柔らかさも備えているが、同時に厳しく鍛えられており、腰に帯びた刀とともに少女が戦いに身を置く者であることを示していたからだ。

当然である。
少女――千子村正は巫剣なのだから。
だが、少女が話しかけられない理由はそれだけではない。

「ねえ、また誤解されたらどうしたらいいかな……?」

そう言って、千子村正が話しかけていた相手が問題だった。
どうやら、彼女は単に一人言を呟いているわけではない。
胸にかかえた人形のようなものに話しかけていたのである。
それだけなら、少女らしい行為に過ぎないかもしれない。
しかし、その人形は……あまりにも不気味だったのだ。