「石煙ッ!!」

少女の放った上段からの斬撃は巻き藁を一刀両断していた。
その断面は滑らかに磨かれたよう。少女の斬撃の鋭さとその刃の斬れ味を物語っていた。
だが、少女はその断面にわずかな乱れがあるのを見てとる。

「……まだまだですね」

少女――水心子正秀は小さく嘆息する。
凜とした美しい少女だった。どこか儚げな印象を与えるのは華奢な体つきのせいであろうか。
長く切りそろえた黒髪は艶やかに輝いている。まだ見かけることが珍しい洋風のスカートから伸びる脚が眩しい。
そんな街中で見かければ誰もが振り返る可憐な美少女の心中にある悩みは、およそ少女からかけはなれたものであった。

「どうすればもっと斬れ味がよくなるのでしょう……古刀の皆さまのように」

古刀。現在の形の「刀」が完成した時期の刀。この時期の刀こそが最上であると考えるものは多い。
少なくとも水心子正秀はそれを真実だと考えていた。
“水心子正秀”という刀工は、そんな古刀を目指し「復古」を掲げた人物である。
ゆえに、彼が生み出した巫剣・水心子正秀その心には強烈な古刀に対する憧れがある。
日々、古刀に近づくべく研究と努力を重ねている新々刀。それが水心子正秀だった。