めいじ館は浅草と上野の近くにある洋風茶房。
このあたりでは珍しい店なので、毎日結構お客さんが入ってくるの。
いつもは少し値段が高めなんだけど、朝は英国では当たり前らしいもーにんぐとかいうお手頃な値段の朝食を提供しているから、朝はとても忙しい。
だからこそ、こうして朝から準備しているわけなんだけど。

「テラスの準備終わったわよ、次はどうすればいいの?」
「ええと……そうですね。外で既に待ってるお客様もいるようですし、早めにパンを焼いてしまいましょうか」
「はーい、わかったわ。ところで牛王吉光はそこでなにをやってるのよ?」
「なにって……見てわからないの、城和泉正宗? 朝食に決まってるじゃないか」
「そういうことを聞いてるんじゃないの! なんで私たちが準備してるのに、あなたがそうやってのんびりご飯食べてるのよ!」
「わたしの仕事はもう終わってるからに決まってるじゃないか。珈琲豆はわたしが選定して買ってきてるんだし、勘定も手伝ってる。ここで給仕する以外、めいじ館のためになにもしていないキミと一緒にして欲しくないね」
「そ、そんなことないわよ! 私だっていろいろ……」
「城和泉さん、手が止まってますよ?」
「ほぇ!? ご、ごめんなさい! すぐ焼くわね!」
「慌ただしいね、まったく。ご馳走様。そっちに持っていけばいいかな?」
「いえ、わたくしが取りに参ります」
「じゃあよろしく。わたしは食後の珈琲をいただくから」
「ちょっと牛王吉光!」
「まぁまぁ、城和泉さん。あれで牛王さんはちゃんとお仕事しているんですから」
「それはわかってるけど……」
「牛王さん、これ持っていっちゃいますね」
「うん、よろしく。そこ、掃除用具が置いてあるから、足元に気をつけて」
「ああ、はい。大丈夫です。さっきもちゃんと避けまし――きゃあ!?」
「ちょっと!? 大丈夫、桑名江!?」
「わたくしの方は怪我もないのですが、お皿が……。うう、これもひとえにわたくしの不運が原因でしょうか……」
「どちらかと言えばただの不注意に見えたけどね……」
「別にいいじゃない。今悪いことがあったなら、次は良いことがあるんでしょ? だったら、開店満員は決まったようなものじゃない」
「なるほど! そういう考え方もできますねっ! さすが城和泉さんです!」
「えへへ……」
「脳天気で結構だね、キミたちは」
「勝手に言ってなさいよ、牛王吉光。私の完璧な仕事振りを見せてあげるわ!」
「まぁ、それなりに期待してるよ」
「あの……おふたりとも、少しいいでしょうか?」
「改まってどうしたのよ、桑名江?」
「もうすぐ開店ですから、お皿を拾って綺麗に掃かないといけませんので」
「……ちょっと待った。この時計少しずれてないかな?」
「本当だ!? ちょっと桑名江、急いで片付けて!」
「き、急にそう言われましても……ッ!」

今日もまた、戦いから離れた一日が始まっていく。
私たちの役目……それは本当は戦うことだけど、こうしてお店で誰かの笑顔を見ることも、最近は悪くないんじゃないかと思う。

電撃G'sマガジン 2016年11月号掲載